読売新聞にインタビューされた記事を紹介します。 

 

こちらからも読めます。

http://www.yomiuri.co.jp/komachi/news/mixnews/20051029ok02.htm

 

「女性靴」大きめサイズでオシャレ

(2005年10月29日  読売新聞掲載)

 

大きめサイズ専門店で靴を選ぶ女性たち(東京・新宿「Queens卑弥呼」で)あるがままの自分…「小足志向」変化の兆し

 

 ガラスの靴にどうしても足が入らず、ウソがばれて恥をかいたシンデレラの姉たちの逸話があるように、大きめサイズの足の女性はなぜか肩身の狭い思いをしてきた。

 

 だが最近、大きめサイズの女性靴を専門に取り扱う店が人気だ。古くさい美の基準にとらわれず、あるがままの自分のおしゃれを楽しむという考え方が、ようやく広がってきたのかもしれない。

 

 東京・新宿の「Queens卑弥呼」。ロングブーツや花柄のパンプスなど流行を巧みに取り入れた靴が並ぶ。普通の靴店と違うのは、サイズが24・5〜27・0センチと、女性用としては大きめのものばかり扱っているということだ。

 

 「足が大きいと靴でおしゃれするのをあきらめがちですが、ここでは選ぶ楽しさがあります」。試し履きしながらそう話すのは、客のウオーキングインストラクター鷹松香奈子さんと斉藤美和さんだ。

 

 鷹松さんの足は25・5センチ、斉藤さんは25・0センチ。2人とも靴探しに苦労し、スニーカーを履いたり、痛いのを我慢して小さな靴を履いたりした経験を持つ。「大きな人こそ背筋をぴんと伸ばして歩かないと」(鷹松さん)と、ようやく出来た専門店を歓迎している。

 

 同店を経営する「卑弥呼」の瀬川岳則取締役は、これまで規格外とされてきた大きめサイズの女性靴を「少子化の中で唯一拡大するマーケット」と見ている。今年8月、新宿の1店を大きめサイズ専門店にした結果、山梨や群馬、富山からも客が訪れ、翌月の売り上げは前年より6割も増えた。

 

 「正直、こんなにニーズがあったのかと驚いています」。9月には大阪で2号店がオープンし、数年内に全国で10店舗を展開する計画だ。

 

 「卑弥呼」以外でも、大きめサイズのコーナーを設ける靴店は増え、大きめサイズの靴を扱うネットショップも盛況だ。

 

 はっきりしたデータはないが、体格向上に伴い日本の女性の足は少しずつ確実に大きくなってきている。

 

 靴メーカーの月星化成によると、同社の婦人靴の主流は約20年前は22・0〜24・0センチ程度だったが、現在は22・0〜25・0センチだ。

 

 「足の外科医」として知られる井口傑(すぐる)慶大教授によると、日本女性の足は大きくなっただけではなく、かかとや足幅が細くて長い、欧米人風の形に変化してきているという。

 

 井口教授のもとを訪れる患者の中には、無理をして小さい靴を履いてきた女性も多い。「健康のためにも自分に合ったサイズの靴を履く女性が増えていいと思いますね」と話す。

 

 「大きい女の存在証明―もしシンデレラの足が大きかったら」(彩流社)を今年9月に出版した米イリノイ州在住のデイ多佳子さんは著書の中で、大きいゆえに心ない言葉を浴びせられ、苦悩した経験を打ち明けている。

 

 身長176センチのデイさんの足は26・0センチ。結婚後、米国に住むようになって初めてコンプレックスから脱し、「ありのままの自分でいい」と思えるようになったという。

 

 ただデイさんは「『規格外サイズ』の女性に対する日本社会の偏見はそう簡単にはなくならないのでは」と話し、女性だけではなく、男性の意識改革も必要だと感じている。

 

 実はシンデレラの靴も、本来は「フリーサイズ」だったようだ。

 

 グリム童話研究で知られる武庫川女子大の野口芳子教授によると、もともとの口承ではシンデレラの靴は「銀リスの毛皮」でつくった靴カバー(室内履き)。それが17世紀末、フランス人によってガラスに書き換えられたという。「靴カバーでは足のサイズが問題になったとは考えにくい」と野口教授は話す。

 

 19世紀にグリム兄弟がまとめた童話では、靴は金製。「王子を魅了したのは『小さくてかわいい』シンデレラではなく、王子を振り切って走り去った体力と、金の靴を履くほどの財力だったと思われます」といい、やはり足の大きさは重視されなかったようだ。

 

 野口教授は「西欧で小さな足や細い腰を『女らしさ』とする価値観が形成されたのは産業革命以降。今は男性もリストラされる時代。しっかり自分の足で立つ女性を求める男性が増えれば、靴のサイズを気にすることもなくなってくるのではないでしょうか」と話す。